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特別コラム 第30回「未来のビジョンを描こう!」

コラム

2022年11月29日

特別コラム 第30回「未来のビジョンを描こう!」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は、まずバックキャスティングという手法についてご紹介したいと思います。

■未来の地球ビジョンを創ろう

何千年も前から伝え継がれてきたことがあります。それは「ビジョンは必ず実現する」ということです。裏を返せば「ビジョンを描かない限り、実現しない」ということです。
このことは成功哲学では、もはや常識となっています。

中村天風師は『ああなったらいいな』という念願だけを心に炎と燃やさないで、もうすでに成就した気持ちや姿を、自分の心に描け」とビジョンの大切さを説いています。
これは、「持続可能な社会(サステナブル社会)を実現させるためには、明確なビジョンを描かなければならない」ことを意味します。

スウェーデンの環境NGO「ナチュラル・ステップ」は、バックキャスティングという手法を提唱しています

バックキャスティングとは、「最終的な到達目標である持続可能な社会が満たすべき原則をまず明確に定義し、環境対策を考える時に常にその対策の妥当性・方向性を検証するコンパスを持ちながら進んでいく方法」です。
簡単に言えば、「将来から現在を見る」ということです。ちなみに、現在から将来を予想することを「フォアキャスティング」といいます。

たとえば、エベレストに登頂したビジョンをはっきり描き、その時点から現在を見て、今何をするかを決めるのが「バックキャスティング」で、毎日計画を立てて訓練すれば、いつの日かエベレストに登れるだろうというのが「フォアキャスティング」と言えると思います。

地球環境はもはや待ったなしの状況であり、「フォアキャスティング」で試行錯誤を繰り返している余裕はありません。やはり、「バックキャスティング」でビジョンを明確にして、最短コースをたどるべきでしょう。

バックキャスティングについて

■ナチュラル・ステップ(スウェーデンの環境NGO)が提唱

ナチュラル・ステップは、1989年にスウェーデンで小児ガンを研究していたカール=ヘンリク・ロベール博士によって設立されました。
活動方針は「中立、科学的、批判しない」。スウェーデン国王が後援者としてついています。

ロベール博士は「違いばかり主張し合っても問題は解決しない。共通点を見いだして、そこから解決策を議論すべき」と考え、国を代表する50名もの学者と一致点を議論しました。

草稿の段階で22回も書き直したくらい徹底的にコンセンサスを図った。このコンセンサスを元に環境教育教材をつくり、430万部をスウェーデン国内の全家庭と学校に配布しました

◆バックキャスティングでビジョンを描く

バックキャスティングは、持続可能な社会を築く方法の一つです。
具体的には、最終的な到達目標が満たすべき原則をまず明確に定義し、環境対策を考える時に常にその対策のリスクや妥当性・方向性を検証するコンパスを持ちながら進んでいきます。

今ではSDGsに必須のビジョン構築の方法として知られていますが、その前提としてロペール博士の想いを引き継いでいくべきです。
1998年に松下電器産業(現、パナソニック)に提案し、採用していただきました。

◆ファネルの壁

上図a(漏斗(ファネル)の壁)のように、地球環境の悪化や再生能力を超えた資源の消費、また人口爆発によって世界中の人々の健康や福祉、経済のために必要な自然資源が次第に減少しています。

このまま何も手を打たなければ、遅かれ速かれ壁に当たってしまいます。しかし、現状では多くの人がシリンダー(筒)のように「このままの状況が続く」と思いこんでいます。

企業においても何も対応しなければ、

① 原材料費の上昇
② エネルギー費用の上昇
③ 環境規制の強化
④ 課税の差別化
⑤ 保険料の上昇
⑥ 信用格付けの低下
⑦ メディアの批判
⑧ 一般市民の信頼の低下
⑨ 環境認識の高い顧客の喪失
⑩ 雇用問題と優秀な人材の確保の難しさ

などファネルの壁に当たってしまいます。これらは企業にとって経済的なリスク(ひいては企業存続のリスク)になってしまいます。

◆4つのシステム条件

① 地殻から取り出した物質が生物圏の中で増え続けない。

鉱物は、地殻の中にゆっくりとしたプロセスで定着していくが、それに相当する以上の石油、石炭、金属、リンなどの鉱物を掘り出さないということです。
企業や自治体にとってこの条件が意味することは、製造や消費のすべてのプロセスにおいて、計画的なスクラップと再生可能な資源を原料として利用するという変革です。

②人工的に作られた物質が、生物圏の中で増え続けない。

社会が生産したものすべて、すなわち製品など望ましいものから、排煙汚染や下水などのように望ましくないものも含めて、科学の技術による循環かあるいは、自然の循環によって新しい資源として再生されるペース内で、生産・排出することです。そのためには資源の利用を極力節約し、PCBやフロン、塩素パラフィンなどの生分解しにくく自然にとって異質な物質は除去しなくてはなりません

③自然の循環と多様性が守られる。

例えばアスファルト化、砂漠化、塩化、耕地の侵食などの人為的な原因による土地の不毛化をとめることです。
企業にとってはできる限り土地面積を効率よく利用し、企業自身の恒久基幹施設に対する必要度の吟味を始めとして、開発によって生産性のある緑地に与える影響を考慮することが必要になります。

④人々の基本的なニーズを満たすために、資源が公平かつ効率的に使われる。

条件①から③を満たすためには、人々は真剣に資源を節約し、効率的かつ公平に利用しなければなりません

そのためには社会のあらゆる局面において、人間のニーズを満たし、かつ資源を節約するもっと洗練された方法・技術を求める努力をしなくてはなりません。
同時に富める国と貧しい国の不公平な資源配分も避けるべきです。

次回は、バックキャスティングの実例についての私が作成した実例についてご紹介したいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二