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特別コラム 第18回「リサイクルを考える」

コラム

2021年10月1日

特別コラム 第18回「リサイクルを考える」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は、「リサイクルを考える」について考えてみたいと思います。

至る所で「リサイクル」という言葉が使われています。地球環境問題やSDGsの関心が高まってきた現れでしょう。

一方、学者さんの中には「リサイクルしても意味がない」と断定する人がおられます。そのために「リサイクルすべきなのか、してはいけないのか?」「いったいどうすればいいんだ?」という混乱がいまだにあります。

この事態を招いている大きな原因は、「人それぞれリサイクルに対するイメージが異なっているにも関わらず、それぞれが持論を主張し合い、聴く耳を持たない」ということです。つまり、コミュニケーションの欠如です。

まずは、それぞれの「リサイクルに対するイメージの違い」を明確にするために少し立ち止まり、リサイクルの意味を改めて考えてみましょう。

■3つの「リサイクル」

日本では、大きく分けて3通りのリサイクルの考え方があります。「リサイクルしよう」と言っても、それぞれイメージが違うので混乱を生じ、場合によってはケンカになってしまうこともあるようです。これでは何のためにリサイクルするのか分かりません。
少なくとも、自分たちが考えているリサイクルは「何を意味しているか」を意思表示しておく必要があります。

①再資源化(再生使用)

ガラス容器のカレット化、PETボトルのペレット化、紙製品の製紙原料化など、いったん使用した物を再び資源として活用することを意味しています。これを「Recycle(リサイクル:再資源化)」の頭文字のRを取って、しかも1つのRであることから仮に「1R」としておきましょう。

②3R(減量・再利用・再資源化)

3Rとは、Reduce(リデュース:減量する)、Reuse(リユース:再使用する)、Recycle (リサイクル:再資源化)のことを言います。3つのRということで「3R」と表します。これが現在の日本で最も多く普及しているリサイクルの考え方です。

③4R(断る、元を絶つ)

4Rとは、「②の3Rに先だってRefuse(リフューズ:断る)することが大切だ」という考え方です。3Rに1つのRが加わって4Rというわけです。

簡単に言えば、包装紙、牛乳パック、ペットボトルなどを購入時点で「いりません」と 断ることです。

これは繰り返し述べてきた「出てきたごみをどう処理するかではなく、ごみが出ないようにするにはどうするか」という命題に対する1つの対策、つまり「発生源を絶たなければならない」という発想なのです。
4Rは、最近当たり前になってきている考え方です。

このように「リサイクルをすべきか否か」という二者択一の問題ではありません。「リサイクルをしてはいけない」と主張する人は、多くの場合「1R」、つまり再資源化をリサイクルと考えているようです。
この場合は、確かにリサイクルすればするほど資源とエネルギーを多く消費するので、“リサイクルしてはいけない”という立場に立つのは当然でしょう。

ところが1Rのことをイメージしている人が、3Rあるいは4Rを実践する人に向かって「リサイクルしてはいけない」と諭すとどうなるでしょうか。「どうしてゴミを減量してはいけないの」「どうして再利用してはいけないの」「どうしてゴミになるものを断ってはいけないの」ということになってしまいます。

1Rを主張する人は学者さんや企業の技術者に多く、「3Rや4Rはゴミの減量3原則であって、リサイクルとは言えない」という人もいます。しかし、その人も「リサイクルショップで服を買ったよ」と言っているのです。リサイクルショップは、実際は再利用(リユース)ですね。

ただし、日本の循環型社会形成推進基本法で規定されているのは3Rであり、それに優先順位が設定されているのです。

◆循環型社会形成推進基本法で規定されている3R

3Rは前述のように「3つのR」でゴミを減らしましょう、ということです。3つのRとは、リデュース、リユース、リサイクルのことです。3つとも最初がRから始まるのでスリーアールとかサンアールと言います。

まず循環型社会形成推進基本法の大きな目的の一つが、図の上の方にある”天然資源の消費の抑制”であることを忘れないでくださいね。

ここで、リデュースは「ゴミを発生させない、ゴミを減らす」ということです。

家庭などから、ゴミがたくさんでてきます。日本人1人当たり1日に平均1㎏くらいのゴミが発生します。そのうちの6割くらいが、商品を包む袋や、お茶を入れるペットボトル、ジュースを入れる缶などです。「容器包装」と言います。

容器包装を減らすためには、エコバッグを持っていってレジ袋を受け取らないとか、ばら売りや包装を最小限にした商品を買うとか、詰め替え商品を利用するとか・・・・いろいろ考えて環境に優しい買い物をすることが大切です。

またリデュースしてゴミを減らすには、食べ残しをしないで、生ごみをできるだけ出さない工夫も必要です。

リユースは、同じものを形を変えずに何度も使うことです。「再使用」ということです。昔からあるのはビールビンや牛乳ビンを何回も洗って再利用することです。ほかにも皆さんの着ていた服やクツをフリーマーケットやバザーに出したり、誰かにあげたという人もいるかも知れません。それもリユースです。

リサイクルは、プラスチックとか、ガラスビンとか、紙パックとか金属でできたものを溶かしたり粉々にしたりして元の原料に戻し、もう一度商品に生まれ変わらせることをいいます。

ここで大切なのは、先に述べたように法律で優先順位が決められていると言うことです。

まずリデュースを心がけ、次にリユースできるものはリユースし、割れたり壊れたりしてリユースできないものをリサイクルしましょうという発想です。

先ほど、リサイクルは形を変えて使うと説明しましたが、形を変えるときにエネルギーを使います。大量にリサイクルをすることはエネルギーや資源を大量に使うことになってしまいます。

日本のようにリサイクルの割合が大きくなりすぎると、エネルギーや資源が足りなくなってしまいます。

◆他にもたくさんある「R」から始まるゴミや資源の使用量を削減する手段

またRefuse意外にもRから始まるゴミや資源の使用量を削減する手段が以下のようにたくさんあります。

Repair (リペア:直す)
壊れても直せるものは修理して使う

Refurbish(リファービッシュみがきなおす)
不良品や中古機器(返品、リース返却品、長期在庫品などを整備し、新品に準じる状態に仕上げる

Remix (リミックス:再編集)
新たな創造のために既にある資源を再編集する

Refine (リファイン:分別)
廃棄するときには分別する

Rethink (リシンク:再考する)
自分に本当に必要なものかどうか考える

Rental (レンタル:借りる)
個人として所有せずに借りて済ます

Return (リターン:戻す)
携帯電話など使用後は購入先に戻す

Returnable (リターナブル:戻す)
Returnにほぼ同じ。用例:リターナブル瓶(飲料水)

Reform (リフォーム:改良する)
着なくなった服や古くなった家などを作り直す

Reconvert to Energy (リコンバート・トゥ・エナジー:再返還する)
利用できないゴミは、燃やす時の熱を利用する

Rebuy (リバイ:買う)
リサイクルされたものやリユース品を積極的に購入または利用する

Regeneration (リジェネレイション:再生品)
再生品の使用を心がける

Recreate (リクリエート:楽しむ)
環境保全型余暇や自然保全型余暇を満喫することは、潜在的な自然体験欲求の充足のみならず自然環境の保全にも役立つ

React (リアクト:響き合う)
自然をわかち合う機会や場面を増やす事によって環境共育に働きかけることができる

Restore (レストア:復元する)
自然環境の復元や生態系サービスの持続的に利用する

ここで私が言いたいのは、「どれが正しくて、どれが間違っているか」ということではなく、「同じ言葉であっても”違うイメージで使っている”ことがある」ということです。議論が噛み合っていないと感じたら、お互いが何をイメージしているかを確認しあう必要があります。

これからは「自分が、あるいは自社が言っているのはどんなリサイクルなのか」を第三者にハッキリ伝え、「相手のイメージしているリサイクルや環境対策は何か」をできるだけ正確に把握する努力が必要になります。上に挙げた「R」の中には法律で定められていないものも多いので特に注意が必要です。

やはりここでも「相手の話に心を込めて耳を傾ける(傾聴)」というコミュニケーション能力が求められます。くれぐれも、ちまたの不毛な議論に巻き込まれないようにしてください。

リサイクルは「SDGsや企業理念を実現するための手段」です。従って、企業経営の基本である「コミュニケーション」努力が極めて大切であることを改めて確認していただきたいと思います。

◆私の判断基準

先に、「(1Rの場合は)リサイクルすればするほど資源とエネルギーを多く消費するので、“リサイクルしてはいけない”という立場に立つのは当然でしょう」と書きました。

しかし、「いや、この商品はリサイクル(再資源化)した方が環境に優しい」と主張する人や会社が出てくることが予想できます。またリユースするにしても、「大量のエネルギーを使う従来の品を長く使うよりも、省エネ性能抜群の新製品に買い換える方が環境に優しい」こともあるでしょう。

世の中は多様性で成り立っているのですから、このようなことが起こるのは当然です。その一つひとつを取り出して、揚げ足取りをし合っても意味がありません。

そこで私は、次のような基準でリサイクルを判断しています。

●大量生産・大量廃棄を前提としたものは、再資源化であれ、再利用であれ、資源とエネルギーの枯渇につながるので、避けるべきである。
●総量(エネルギーや資源の消費量と廃棄物量)の削減を最優先にしているものであれば、再資源化でも、再利用でも実施する価値がある。

たとえば、「大量生産の効果によって販売価格が下がり、販売数が激増した場合」や「省エネ効果抜群で電気代が下がったのはいいが、その分が他の環境負荷の高い商品の購入に回された場合」などは、結果として社会全体の環境負荷を増大させてしまいます。このような現象を「リバウンド効果」といいます。

大量生産によって販売価格を下げることができたのは、トータルの製造費用が低下したのではなく、単品当たりの製造原価が下がったからです。省エネ効果で電気代が下がったというのも、社会全体で下がったわけではありません。

一般に「エネルギー原単位を○○%削減する」という表現が用いられる場合は、製品1台あたりとか1トンあたりのエネルギー使用量を削減することを意味します。

ただしこれは、「生産量を一定に保つ、あるいは削減する場合」にトータルのエネルギー使用量を削減できることを意味します。販売量(生産量)が増大する場合は、例え「エネルギー原単位が減ったとしても」製品全体としての使用エネルギーの総量が増えることになるので注意が必要です。

とは言え、企業として販売量の増大を目指すのは理解できます。これからは、エネルギー原単位もトータルエネルギー使用量も「同時に」削減することが求められるでしょう。

◎これまでも書いてきたことですが・・・

企業人としては、専門用語の知識を詰め込むよりも、「いかに捨てているお金を減らすか」という知恵を絞る方が重要です。廃棄物にしても削りカスにしても、買ってきた素材の一部なのですから、元々はお金なのです。
この素材をどういうふうに使い切ったら(活かし尽くしたら)良いかを考えるのです。

私たちは「廃棄物を捨てていたのではなく、資源すなわちお金を捨てている」ということに気づく必要があります。廃棄物という言葉を使えば、捨てることを正当化してしまいます。しかし、お金を捨てているという観点に立てば、「もったいない、できるだけ有効に使おう」という発想になると思います。

棄てる物をできるだけ少なくする、つまりお金を無駄にしないのは経営者ひいては企業人の重要な責任です。環境問題の解決(ひいてはSDGsの実現)と企業経営とを一体化して考えてくださいね。

次回は、サイフサイクルアセスメントとエコデザイン(環境配慮設計)について考えてみたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二