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特別コラム 第8回「まだ実践をためらっている人にどう伝えるか」

コラム

2020年11月29日

特別コラム 第8回「まだ実践をためらっている人にどう伝えるか」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。
これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は前号に関連して、「まだ実践をためらっている人にどう伝えるか」について考えてみたいと思います。

私は環境について講演を開始して以来、たくさんの反論を受けてきました。
特に「行動を起こさない理由」をあげる人が多かったように思います。

私が環境問題に関心を持ち始めた50数年前とは違って、現在は膨大な情報が蓄積されています。しかも、インターネットで直ちに調べることができます。
少し調べるだけで、環境問題がかなり深刻になっていることが分かります。

それに、充分なデータがないと行動を起こせないわけではありません。
十数年前の少ないデータでも「何とかしたい衝動」に駆られ、行動を開始した人がいます。私もそのひとりです。そして、同じような志を持つ人が集まり、実践を続けています。

とは言え、世の中は多様性に満ちています。現在の膨大なデータを見ても、行動・実践をためらっている人がいます。データそのものを疑っている人もいます。

もちろん、その人なりの考えがあってのことですから、私がとやかく言う筋合いのものではありません。
ただ、これから挙げる「行動をためらっている」あるいは「行動しない」理由には疑問を抱かずにはおれないのです。
ここで、そのことについて少し考えてみたいと思います。

科学者と一般人の間にある深くて大きな溝

以前から、「科学者と一般人の間に深くて大きな溝がある」ような気がしてならなかったのです。
その理由を考えていた時、『「科学的」って何だ!」』(松井孝典/南伸坊共著:ちくまプリマー新書)という本に出会いました。
それによると、科学は「わかるか、わからないかの世界」、世間は「納得するか、納得しないかの世界」だというのです。納得です!
これでハッキリしました。科学者として分かったことを科学的データを駆使して説明しても、一般人は「納得しない限り動かない」のですね。

どちらが正しいかとか、どちらが偉いかという問題ではなく、それぞれの違いを認め合うことが不可欠です。
だとしたら、科学者(専門家)は、科学的データや仮説を一般人が納得できるように表現しなければなりません。
そして私たち一般人も可能な限り科学的知識を身につけ、分散した要素を統合し、誰もが納得できるような行動指針を創り上げなければなりません。

こうして科学者と一般人の溝を埋めることも、環境問題の解決のためには不可欠だと思います。

企業の中では、環境部署は専門家に近い発想で一般社員(場合によっては社長や管理職も)に環境活動を促そうとします。
環境部署にいる人は、この溝をどう埋めていくかを考える必要があります。
では、企業によくある話を少し取り上げてみましょう。

データが古いので参考にならない?

環境問題について話し合う時、必ずデータを使います。このデータは当然適切でなければなりません。
ここで適切というのは、「正しいデータであること」はもちろんですが、「いつ」「どこで」「誰が」「どんな方法で」「どんな条件で」「どんな仮定に基づいて」測定したのかという、「背景」が確かでなければなりません。

背景のハッキリしないデータは、タコの入っていないタコ焼きのようなものです。
例えば、「海面は上昇していない」とか「南極の温度はマイナス50℃だ」という人がいたとしても、その人に測定条件などの背景(測定条件)を尋ねてみてください。
「北極=北極海」など、「間違った仮定に基づいた仮説は、間違いしか産み出さない」ことに注意してください。
北極は地理学上の定義では北緯66.5度以北をいい、アラスカやグリーンランドなど陸氷が大量にある場所も含まれているのです。
「北極の氷が溶けても海面は上昇しない」と主張する人も多いのですが、その人に「あなたが言う北極の定義を教えてください」と尋ねて見てください。議論をする際には、お互いの定義を確認し合うことが必要です。
またマイナス50℃というのは南極大陸のではなく”南極点”の平均気温なのです。

このように、世間に流れている情報には「正しいとはいえないものや、間違っているデータもある」と言うことを説得ではなく、納得してもらうことが必要です。

またデータに関して「このデータは5年前のものだから、古くて使えない」などという人もいます。
もちろん間違っているデータは使いものになりませんが、古いからといって使ってはならないとすると、とても奇妙なことが起こります。

当然のことですが、今使っている最新のデータは5年後、確実に「5年前のデータ」になるのです。そのとき古くて使えないのなら「今でも使えない」はずです。
そんなことになったら、永遠に使えるデータは出てこないかも知れません。 古かろうが新しかろうが、きちんとした背景の備わったデータを尊重し、活用することが大切なのではないでしょうか。

環境に配慮すると会社が成り立たない?

今でも「環境と経営とは相反するので、環境に配慮すると売り上げが減少し、経営が成り立たなくなる」と信じている人が多いようです。
しかし、これは大いなる誤解です。方法によっては、両立できることも多々あるのです。

以前、私はある会社で廃水のpHをコントロールする仕事をしていたことがあります。
pH値が高いと酸性の薬品を、低いとアルカリ性の薬品を注入します。
従来の方法は、制御方法の関係で薬品の使用量が多くなっていました。
そこで、新しい制御方法によって薬品の使用量が最小限で済むようなシステムを提案しました。
すばらしい! はずでした。
ところが、販売サイドからクレームが付きました。 「そんなのできたら、薬品が売れなくなるじゃないか」と。
では、どうしたらいいのでしょうか?

結論を書きますと、「システムや機器を販売するのではなく、機能を売る」、つまり「例えば、pH7をにすることを保証する契約を結ぶ」ということです。

そうすると、売る方としても「薬品使用量が少なくなればなるほど利益が大きくなる」ことになります。もちろん、買う方も「薬品タンクが小さくてすむ」、「中和反応で発生する生成物が少なくなる」「メンテナンスが楽になる」など大きなメリットがあります。

社会全体としては、省資源にもつながります。
このような動きを最近は「サービサイジング」などと呼びますが、言葉なんて気にする必要はありません。言葉の定義は、多くの実績が出た後で研究者が分析した「後付け」に過ぎないのですから。

要は、「環境に配慮することが、買い手も売り手も得をするシステムはないか?」を追求することです。
できない理由は無限にあります。できる理由以外は、すべてできない理由です。

1つでいいので、できる理由を見つける

一方、できる理由は1つあればいいのです。
現在、成功している人(企業)は「他の多くの人(企業)ができない理由を探している間に、できる理由を見つけ出し実行した人(企業)」です。

理想だからあきらめて何もしないのか、理想だけど近づくことができると信じて行動するか?
私は押しつけることは絶対にしませんが、少なくとも私は後者でありたいと思っています。
SDGsはあるべき理想の未来を掲げていますが、「理想だからできない」では、いつまでたっても実現は難しいでしょう。

反論に応えるための絶対条件

私は、このようにして反論に応えてきましたが、そのための絶対条件があります。
それは、「反論している人の意見をしっかり聴き、気持ちを受け止める」ということです。
反論がたとえ間違っていたとしても、その人にとっては(反論している時点では)事実なのです。いきなり、否定されて喜ぶ人はいません。

まず、その人が「そう信じている事実」を受け止めてください。そして「あなたはこう思っているのですね」と確認してから、「こんなことは考えられませんか」とか「別の角度から見てみると・・・・」など、反論している人が関心を持ちそうなことから話してみましょう。

みんなが言うから同調するのではなく、(本音で)思い込んでいると「見えるはずのことが見えなくなる」ことが結構多いですからね。

あっ、もう1つ絶対条件を忘れていました。
それは・・・・ニッコリ、笑顔で・・・・何をするにしても、最も大切なことですね。

新商品、新サービス(創造性)開発効果が大きい

特に質問が多いのは、「上司、特に経営トップにどう伝えるか」というものです。

いま、どの企業も懸命に新商品や新サービスを開発し、市場で優位に立とうとしています。そのためには、従業員の創造力を活性化することが不可欠です。どこの企業でも「異業種と交流しよう」とか「違った視点でものを見よう」というスローガンが呪文のように唱えられています。

そこで、経営者自ら異業種交流会に参加したり、従業員を経営戦略や潜在能力(創造力)開発セミナーに派遣したりと大変な努力を払っているようです。そのための費用は、決して安いとはいえません。

実は「SDGs活動や環境配慮活動」そのものが、あまりお金(コスト)をかけずに創造力を向上させる「創造力活性化トレーニング」なのです。
SDGsの達成や環境配慮のために知恵を産み出すプロセスには、「異業種的な発想」と「現在の市場に対する見方とは違った視点」のどちらも必要です。
さらに全体を見る鳥瞰力や論理的なシステム思考力も必要です。

1つひとつは最善の方法に見えても、それぞれがトレードオフの関係で効果が相殺されたり、全体として見ると別の問題が出てきたりすることがあることはご承知の通りです。SDGs関係では特に注意が必要です。

つまり、SDGs活動や環境配慮活動に取り組むこと自体が創造性開発、ひいては新製品や新サービスが生まれる源泉となり得るのです。
SDGsや環境への取り組みは、もちろん企業だけではなく、子どもたちの創造力開発にも役立ちます。ぜひともお試しください。

経費(コスト)節減は、企業が利益を確保するための重要ポイント

たいていの企業では当然のように「休み時間には蛍光灯を消そう」、「コピー用紙は白色度70パーセントの再生紙とし、できるだけ裏表を使おう」、「工程の無駄を省こう」というような、経費の節減策が実施されています。

このような経費節減策そのものが、エネルギーや資源の節約につながり、地球環境問題の解決に貢献することは今さら言うまでもないでしょう。

しかし残念なことに多くの場合、これらの経費節減効果は自社利益に対する貢献としてだけ報告されているようです。
従業員に対して、「経費が1000万円節減されたので、当社の経常利益が1億円になった」というような報告しかしていないとすれば、もったいない限りです。

ましてや、経営者が「常にお金儲けのことしか頭にない人」と従業員に思われていたとすると、「うちの社長は本当にケチだからねえ」と陰で言われかねません。

そこで、平素から地球環境問題について従業員にどんどん報告し、「地球環境問題は誰かが解決してくれるという消極的な考えではダメだ。たとえ、少しの経費節減であったとしてもその積み重ねが大きな力となる。まずは、わが社から始めようではないか」と(熱く)語るのです。

このとき、先の報告に加えて、例えば「エネルギーや資源の節約によって経費が1000万円浮いたということは、地球環境に対して1000万円もの貢献をしたということだよ。つまりこの1000万円は地球からの報酬なんだ」といえば、「よし、地球のためにもっと知恵をしぼろう!」という意欲が出てくる可能性が十分あります。
そして使命感を共有した従業員から、自発的にどんどん経費節減のアイデアが出てくるようになるでしょう。

このように業務命令で力づくで説得することよりも、心から納得する方法を企業なりに考えてみてください。

経営者が社員に伝えるには?

最近は経営者が環境問題やSDGsを勉強して、「何とか社員にそれらの重要性を伝えたい」という人も増えてきています。そのために社員に「熱く語る」人が多くなってきたと聞きます。

その場合に注意していただきたいことがあります。
熱く語るといっても、大声でまくし立てるというのではなく、毎日淡々と継続して語り続けるということです。
熱い言葉で熱く語ると、聞く方は火炎放射器を向けられているように感じ、とても耐えられないという社員も多いでしょう。

ところが、ぬるま湯を少しずつかけるように、毎日毎日倦むことなく続けていると、心を開く社員も出てきます。
何も言葉である必要はなく、むしろ実践する姿を見せる方がより効果的です。
これが「使命感を熱く語る」いや「温かく語る」という意味ではないでしょうか。

ある経営者の実例

ある経営者は、環境問題の話題を休むことなく朝礼で語り続けることで、「私は本気で環境問題を解決するのだ」という使命感を従業員に伝えました。

初めのうちは、「どうせまた線香花火みたいに燃え尽きてしまうさ」とほとんどの社員が横を向いていました。
しかし、倦むことなく続けている社長の姿を見て「今度は、社長は本気だ」と感動し、心から納得して全社一丸となって環境問題に取り組み始めたということです。

地球温暖化が解決すると・・・・こんなに良いことが起こる

従業員(もちろん学生も)に対して、「地球温暖化など環境が悪化するとこんな最悪な状況が発生する」という危機感から行動を促すことは大切なことです。
ただ一層の活動意欲を高めるためには、同時に「環境問題が解決すればこんなに良いことが起こる」ということを示すことも極めて重要です。

「自分たちが活動することで、例えば日常常務を通じて社会に貢献できる」という意欲が高まる人も多いからです。

以下に少々長くなりますが、「地球温暖化が解決すると・・・・こんなに良いことが起こる」ということを挙げてみます。

世界の自然災害が減少する

①熱帯低気圧の大型化にブレーキがかかる
 気温の上昇が押さえられると、海水の表面温度の上昇を抑え、ひいては熱帯低気圧の発達に必要なエルギーも自然の変動範囲に収まる。

長期的に見ると、台風やハリケーンなど熱帯低気圧が巨大化する割合が小さくなる可能性が高まる。
また風力発電施設が猛烈な風で倒壊したり、波力発電施設が高波で破損するリスクが小さくなり、発電施設の建設費や維持費が削減できる。

②集中豪雨に対する不安が軽減される
 上昇気流が弱くなるので雷雲が発達しにくくなる。
このため集中豪雨の発生が抑制され、降雨量も予想の範囲を超えることは少なくなる可能性がある。

現在でも集中豪雨が降ると土砂崩れなどに脅える地域があるが、温暖化が止まると、このような地域を最優先した防災対策を講じることができる。

③雪どけによる洪水を防ぐことができる
気温の上昇が押さえられると、雪どけのスピードが緩やかになり、洪水のリスクが低下する。同時に、正常な雪どけによって淡水資源が大地を潤す。

もちろん、温暖化が起こらなくても、巨大な熱帯低気圧や集中豪雨は発生するでしょう。しかし、その頻度は少なくなり、災害リスクが低減することは充分に予想できます。

氷床や氷河の縮小をくい止めることができる

南極、アラスカ、グリーンランド、シベリア、アルプスなどの氷床や氷河が気温の上昇に伴い、急速に縮小している。
そのために洪水や淡水資源の減少のほかにも、永久凍土から温室効果ガスのメタンが発生したり、乾燥による樹木への被害が大きくなってきている。

また北極海の氷も大量に溶けていて、同海の塩分濃度が下がってきているため、地球の海流循環が変わる可能性があると指摘されている。
とくに「欧州周辺に大量の熱を含んでいる海水の循環が変わり、英国や北欧などは氷河期のように寒冷化する可能性があるとも言われている。

温室効果ガスの発生が抑制されると、氷床や氷河の縮小をくい止めることができる。
またこれは、英国や北欧の寒冷化に対する不安も軽減できることを意味している。

南極で氷の崩壊にブレーキがかかる

南極付近の気温が上昇しなければ、氷の崩壊にブレーキがかかる。
そうなれば、「南極棚氷の大規模な崩壊」の可能性が小さくなる。

このため、崩壊に伴う大規模な津波発生などへの不安が小さくなるばかりでなく、アラスカやグリーンランドなど陸氷の溶解にもブレーキが掛かり、(地球温暖化が起こらなければ本来必要としない)巨大で長大な防潮堤の建設など、沿岸部対策コストが低減できる。

生態系の破壊にブレーキがかかる

巨大隕石の衝突や大規模な火山の噴火などを除く自然変動の範囲内では、生態系は環境変化に充分対応できる。
英国リーズ大学のクリス・トーマス教授は、かなり以前から「2050年までに温暖化で絶滅の危機に追い込まれる生物種は100万種を超える」と指摘している。

地球温暖化がストップすることで、100万種以上の生物種が絶滅の危機を免れることになる。

また微生物やバクテリアの活躍が阻害されず、生きた土壌が復活する。
そこでは様々な樹木・草花・昆虫・鳥・動物などが豊かな多様性を持つ強固な生態系を作り上げる。

食糧生産の減少にブレーキがかかる

気温上昇や降水量の変化が小さくなると、乾燥や水害による影響や病虫害リスクが低減され、農地の生産性などが安定する。
中国をはじめとするアジア地域やアフリカでは、温暖化と同時に人口爆発も起こっていているが、農地の生産性が上がると、大規模な飢餓や難民問題が回避される可能性がある。
稲・麦・トウモロコシなどの作物は開花期の温度上昇に弱く、温暖化によって開花や花粉が減少すると予想されている。

また平均気温が2度上昇することにより、茶やコーヒーの生産量が急激に減少するとされている。これは、途上国にとって貴重な収入源が失われることを意味する。そしてこれらの作物の生産量を保つためには、森林地帯を開拓しなければならなくな 地球温暖化がストップすると、このような状況から抜け出すことができる。

世界中で健康被害が改善される

WHO(世界保健機関)は、かなり前の2003年12月に、「世界中で起きる下痢症の2.4%、マラリアの2%は温暖化が原因とみられる」と報告している。

地球温暖化の進行を止めることで、マラリアやデング熱などの熱帯病が温帯地域に拡大するのを防ぐことができ、コレラ菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌O-157などの食中毒菌の繁殖も抑えることができる。
さらにまだ原因が明らかではない新型コロナウィルスのような感染症も、環境破壊を止めることで蔓延を阻止できるかも知れない。

さらに気温そのものの上昇を抑えることで、熱中症(熱けいれん・熱疲労・熱射病など)の発生増加にブレーキをかけることができる。

国際紛争のリスクが低減する

アメリカ国防省は、「地球温暖化の進行により、欧州にはアフリカから、米国には中南米から大量の環境難民が流入し、インド、中国、パキスタンなどでは水や食料資源をめぐる紛争が激化する危険性が高い」「EUや中国の不安定化のほか、エネルギー資源をめぐる日中間の緊張が高まる可能性がある」としている。

温暖化を解決することで、国際紛争をもたらす少なくとも一つの大きな要因が解消する可能性がある。

地球温暖化が止まると、 他の環境問題も解決に向かう!

オゾン層破壊は?

南極で冬季に成層圏の温度が下がり、マイナス78℃以下になると極成層圏雲(PSC)ができやすくなる。この極成層圏は春先にオゾン層を破壊し、「オゾンホール」発生の原因になる。
最近は、北極やシベリアなどでも極成層圏雲ができ、オゾンホールに似たものが発生している。
このままではオゾン層の回復が大幅に遅くなる可能性がある。

地球温暖化は、地表付近の気温を上昇させる一方で、成層圏(オゾン層付近)の温度を低下させる。
地球温暖化が止まると、温度の低下が緩やかになり、オゾン層破壊も軽減されること可能性が高まる。

森林破壊は?

熱帯林には熱帯の、また温帯林には温帯の気候条件が必要。樹木の多くは急速な温度上昇に対応できず枯死してしまう。
また、乾燥化が進み森林火災が発生しやすくなる。
これらは二酸化炭素の発生源になってしまう。
地球温暖化が止まると、森林破壊のスピードが減速することになり、上記のリスクが小さくなる可能性がある。

水資源の危機は?

温暖化が止まると、
1.干ばつの被害が減る、
2.河川の渇水が発生しにくくなる、
3.地下水の過剰な汲み上げが抑制される、
4.山岳氷河の縮小が止まるなど、淡水資源の減少に歯止めがかかる、
など、いいことがたくさんある。

また水温が高くなると、湖沼や河川の水質が悪化する。
これは水温が高いほど水に溶ける酸素(溶存酸素)が少なくなり、浄化能力が低下したり、酸欠になったりするため。
温暖化が止まると、水温上昇が抑えられ、水質の悪化(水質汚染)の一つの要因が緩和されることになる。

酸性雨は?

温暖化抑制策としての「省エネルギー」や「自然エネルギーへの移行」により、石油や石炭などの化石燃料の燃焼が抑えられる。
また、自動車やトラックから自転車や鉄道の移動手段の変更(モーダルシフト)により、ガソリンやディーゼル燃料の使用が抑制される。

これは、酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の減少につながる。

ゴミ・廃棄物問題は?

温暖化対策として「ゴミの削減策」がとられた場合は、二酸化炭素の発生が減少する。
温暖化を意識することで、結果としてゴミの削減につながる。

生物種の絶滅、食糧問題、飢餓問題は?

温暖化が止まれば、多くの生物種が絶滅の危機から脱し、遺伝子資源も守られる。
また穀物や水産資源が保たれる可能性が大きくなる。
さらに干ばつや砂漠化のリスクが減少する。
ひいては、アフリカやアジアの飢餓や環境難民の問題も解決に向かう。

このように温暖化の改善だけでも「かなりの問題が解決に向かう」ことが期待できます。
さらにSDGsはすべてがつながっている(関連し合っている)ので、それぞれの改善はすべての改善につながります。

つながりというのは、「一つ善くなれば、すべてが善くなり」「一つ悪くなれば、すべてが悪くなる」ことを意味します。ぜひこのことを意識してください。
その意味で、私たちにとって関係の無いことなどありません。

SDGsを紐づけるだけでは勿体ない

現在、SDGsを紐づけるだけで満足している人や会社が多すぎるような気がします。もちろん紐づけは大切な第一歩ですが、それだけでは勿体ない限りです。

SDGsはすべての人が関係しています。企業においても関係の濃淡はありますが、すべてに関係しています。
今のところ関係が無いと思っていたとしても「少し視点を変えるだけで大いに関係していることが見つかる」かもしれません。
そこに新たなビジネスチャンスがあるかも知れません。

一人や1社では難しくても、多くの人や企業が協力し合えば必ず見つかる。
そう信じてください。

今日のテーマは、様々な人のパートナーシップで課題を解決することが不可欠だと言うことを示しています。
単なる環境活動だけではなく、まさにSDGsへの貢献にとっても極めて重要な要素です。
次回は、「環境経営に取り組むと企業が成り立たない」という思い込みについて、さらに詳しく考えてみたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二