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特別コラム 第5回「もったいないとサーキュラーエコノミー、そしてその融合」

コラム

2020年8月28日

特別コラム 第5回「もったいないとサーキュラーエコノミー、そしてその融合」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。
これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー
講師を務めさせていただいておりました。

今回は、「もったいないとサーキュラーエコノミー、そしてその融合」について考えたいと思います。

もったいないの心(知恵)を世界に広める~サーキュラーエコノミーとの違い~

私は、日本が世界に貢献できるのは、「もったいないの心(知恵)を世界に紹介し広める」ことだと思っています。SDGsの実現とその先の展開にも、大いに貢献できると期待しています。

現在、サーキュラーエコノミーというシステムがヨーロッパを中心に出てきています。このシステムを普及させようとしている人の多くは、「まず資源を確保して、その資源を何回も有効に活用し循環型経済に持って行こう」という思いが強いようです。
それはそれで素晴らしいアイデアですが、「まず最初に使用する資源を確保しよう」とする政策が中心になりがちです。もちろんうまく回れば良いのですが、下手をすると資源の奪い合いになり、最悪の場合は紛争を引き起こしかねません。

サーキュラーエコノミーは、世の中にある「無駄」を有効活用してビジネスを生みだす成長戦略のことです。
EUは、2014年に「循環経済に向けて:欧州ゼロ廃棄物プログラム(Towards a circulareconomy: a zero waste programme for Europe)」という循環経済戦略を発表しました。
資源は安価かつ大量に利用可能で、使用後は廃棄可能との想定に基づく「採掘・製造・消費・廃棄(取って、作って、消費して捨てる”take-make-consume and dispose”)」 という過去の直線的な経済モデルから、再使用・修理・修復・リサイクル等によって、資源利用のループを閉じていく循環型経済モデルへの移行を目指しています。

ここでリサイクルする際にエネルギーを消費することに注意してください。最初に資源を充分確保することに意識が偏りがちになり、無駄が生じることが前提になるということです。

「もったいない」とは?

一方『もったいない』は、「最初に使用する資源を最小にする」「そもそも無駄になるものを出さない」という発想が根底にあります。ここで理解を深めるために、『もったいない』について考えてみましょう。

今でも印象に残っているのが、祖母の「もったいない」という言葉です。当時は聞き流していたつもりでしたが、年齢を重ねていくとその言葉がズシンと心に響くようになりました。

私は、地球温暖化や廃棄物過多、生物多様性の崩壊などの地球環境問題だけでなく、SDGsに限らず、多くの社会問題を解決するには『もったいない』の心を世界中に広める必要があると思っています。日本人に連綿と受け継がれてきたこんなに素晴らしい心(知恵)を伝えていかないと、まさに「もったいない」ですよね。

もったいない。

日本では、昔から「当たり前のこと」でした。しかし、高度成長時代以降になって、この精神が失われてきました。そこで心ある人たちが、その大切さを訴え続けてきました。年配の人ばかりではありません。1993年には、日本青年会議所が『もったいない読本』という素晴らしい本を出されています。
ただ残念ながら、「もったいない」は「説教臭い」とか「ダサイ」という言葉で掻き消されていました。

しかし、2004年ノーベル平和賞受賞の故ワンガリ・マータイさんが日本の「もったいないの心」に感動し、世界に広める活動を始められました。今では「MOTTAINAI」は世界語になっています。素晴らしいことだし、ありがたいことだと思います。
マータイさんは2011年に亡くなりましたが、これからは私たち日本人が誇りを持って『もったいない』の心を世界に伝えていきましょう!

もったいないの3つの意味

私たちは「もったいない」という言葉を何気なく使っています。今さら、定義するというのは意味がないかもしれません。しかし、その精神が薄れてきたように感じますので、あえて私なりに定義してみたいと思います。
私は、「もったいない」には3つの意味があると考えています。

①畏れ多い

私ごときには”もったいない”ことでございます、と表現する人がおられますね。

②「たくさんある物をやたらに使っては惜しい」という氣持ち

漢字で書けば「勿体ない」という気持ちですね。

これは、松原泰道老師が『人徳の研究』(大和出版)という書物でも書かれています。

昔、水はふんだんにあるにも係わらず、おじいちゃん、おばあちゃんたちは「もったいない、もったいない」と言って大切にしていました。
後世のすべての「いのち」のために、杓(ひしゃく)に汲んだ水のうち半分を元に戻すという「半杓の水」という故事も残っているほどです。

③「その人、その物を活かしきっていない」という気持ち

勿体あらしめるの反対語としての「勿体ない」ということです。
つまり、「この世に存在する、あるいはこの世に生まれてきた目的を果たせずにいることを惜しむ気持ち」です。

これら3つ、あるいはそれ以上の意味が渾然一体となって「もったいない」という言葉をあらしめているのではないでしょうか。

現状のビジネスにおける「もったいない」について

現実問題として「もったいない」はどのような行動の原動力になっているのでしょうか?

私見ですが、現状のビジネス界では「もったいない」は、2つふたつの潮流の中に見て取ることができます。

潮流1:

ビジネスの世界にこそ”もったいない”の精神が大切。店頭で売れ筋商品を欠品して販売機会を逃がしたとき、全社員が「もったいない」と反省できる企業風土をつくりたい。
もったいないというのは、ケチくさい、消極的な思考ではない。無駄を極力省き、かつ販売機会ロスを防ぐ前向きな考え方である。

これは大手コンビニチェーンの社長さんの言葉です。

潮流2:

当社がレンタル事業を始めたのは、「もったいない」という考えからです。それは物がたくさんあるから消費してもよい、少なくなったから節約しようという単純な考えからではありません。「もったいない」の逆、「もったいある」というのは、物の本体をあらしめるということです。有機物であろうと無機物であろうと、この世に存在するもののすべてを十分に活用することが、物の本体をあらしめることなのです。

これは大手レンタル企業の元会長さんの言葉です。

さて、皆さんはどちらの考えに共鳴しますか。
人それぞれですから、もちろんどう考えても自由です。ただ言えることは、現在は前者(潮流1)の経営者やビジネスマンを辣腕とかヤリ手とか称して評価する傾向が大きいということです。
まだまだ薄利多売や計画的陳腐化戦略(あなたが持っているのは古いよ、早く捨てなさい)を崇拝する人が多いということですね。

ただし、この戦略(方策)は「早く捨てさせる」ことが奨励されている場合と、「捨てるときのコストがタダ」の時だけに通用するものです。
言うまでもなく、「すぐに壊れる製品は相手にされなくなったこと」、また「ゴミや廃棄物回収の有料化」などで、このような戦略(方策)は通用しなくなってきました。

一方で、後者の考え方がだんだん支持され、評価されつつあることは紛れもない事実です。特に新型コロナウィルス感染症の問題が拡大してからは、顕著にその傾向が出てきていますね。私は、明らかに時代が変わってきているように感じています。

「もったいない」と企業不祥事

賞味期限切れの食材を使った企業不祥事が相次ぎました。「まだまだ食べられる状態だったので、もったいないと思って使用した」というコメントが経営者や工場長から出ています。このコメントを聞いて、どう思われますか?

「もっともだ。そもそも賞味期限が来ても充分食べられるし、余ったからといって捨てるのは環境的にも問題だ」。「隠していたのは良くないが、会社の言うことにも一理ある。
賞味期限が切れていると言って、まだ食べられる食材を拒否する消費者にも問題がある」。

環境問題に関心のある人は、このような意見が多いようです。環境負荷の観点から考えると、何かもっともらしくて、確かそうですね。

では、2つの「もったいない」という立場から見るとどうでしょうか?

立場1.「たくさんある物をやたらに使っては惜しい」という立場

残り物がたくさん出てきたからといって、やたらと廃棄するのは「もったいない」。だから、廃棄しないように食品(商品)に使ったのだ!

立場2.「その人、その物を活かしきっていない」という立場

たくさん残り物を出すこと自体が、その食材を活かしきっていないという意味で「もったいない」。だから、残り物が出ないように、つまり、捨てるものがなくなるように計画し、実行したのだ!

この違いは重要ですね。

「立場1」は、資源が膨大にあり、捨てる場所が充分ある時代の「もったいない」です。
「立場2」は、資源や捨てる場所が限られている時代の「もったいない」です。

産業界ではCSR(企業の社会的責任)の重要性が叫ばれていますが、これに対応するには、「立場2」のような「物を活かしきる」という発想が不可欠です。

実は「立場2」の「もったいない」の方が、「食材の購入量が減らせる」、「フードロスを削減できる」、「廃棄物処理コストが低減できる」、「その分エネルギーが減少し、電気代やガス代を安くできる」など、企業としてのメリットが大きいのです。

何も産業界に限らず、私たち個人個人も、資源・捨てる場所・自浄能力の有限性を理解し、「物を活かしきる」という発想で生活する必要があるのではないでしょうか。

企業利益にも、家計にも、環境にも良い!
みんなで、「物を活かしきる」という「もったいない」を拡げていきませんか?・・・・日本にも、世界にも!

SDGsの達成にも「もったいないの心」が役立つ

前述のように、私としては「物を活かしきる」という「もったいないの心(知恵)」を世界中に拡げたいと思っています。
もし、人間がこの「もったいない」という心(知恵)を石油や鉱物、熱帯林などに向けていれば、資源枯渇の問題や環境問題もこれほど深刻にならなかったはずだからです。
人にこの心で接していたら、いじめや差別、高齢化問題もこじれなかったかも知れません。当然、SDGsの諸問題も最小限に抑えることができたのではないでしょうか。

今回の最後になりますが、サーキュラーエコノミーの権威である「アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクターである朝海伸子 氏」は次のように述べておられます。

いずれ“ものづくり”の技術を生かした(サーキュラー・エコノミーを超える)革新的なモデルが日本から誕生する可能性は十分ある。私はそう思うし、またそれを大いに期待しています。

その革新的なモデルのひとつが、「もったいないとサーキュラーエコノミーの融合(私が勝手にMS融合モデルと名付けました)」ではないかと私は思うのです。つまり「無駄(廃棄物等を)を富に+無駄(廃棄物等)をつくらない」を有機的に融合させて、真の循環社会を構築するのです。

SDGsに限らず、輝く未来が早く実現するために、まずは「もったいないの心(知恵)」を世界中に拡げたいと思います。まずは、私たち日本人から始めましょう!

次回は「CSVなどこれからのビジネス」について考えたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二